社労士業務(髙木社労士事務所)

社員が入社したときの事務手続き

社員が入社した場合、税務や社会保険について様々な事務手続きがあります。漏れのないように注意しましょう。

・社員から提出を受ける書類や確認事項

新たに社員が入社した場合、社内での事務や社会保険関連の届出などを行います。
そのため、新入社員から、手続きに必要な書類等を提出してもらいます。
必要書類は、提出期限を決めて漏れなく収集しましょう。

入社時に提出を受ける書類・確認事項

必要な書類等 内容・確認事項
①雇用保険被保険証
(前職がある場合)
前勤務先から渡された被保険者証を用意してもらいます。
雇用保険の被保険者番号は、前職から引き継いでハローワークに登録されるため、提出書類に番号を記載します。
②年金手帳 年金手帳には、10桁の年金番号が登録されており、番号を年金事務所への提出書類に記載します。紛失した場合は、届出の際に合わせて再発行の届出を行います。
③扶養者の情報 扶養者の続柄(妻・長男など)、氏名、性別、生年月日、職業などを把握します。扶養の把握は、次の事項の確認の際に必要です。
・給与計算時の源泉所得税の計算
・健康保険の扶養・国民年金第3号被保険者の届出
・家族手当(支給している場合)
④扶養控除等(異動)申告書
⑤源泉徴収票
(前職がある場合)
源泉徴収や年末調整などの税務事務に必要になります。
※入社日を記録(メモ)しておいてください。
⑥履歴書 氏名・生年月日・住所など本人の基本情報が記載されているため、ハローワークや年金事務所に提出する書類や労働者名簿作成に必要になります(一般的に採用面接時に入手済み)。
※通勤のための通勤交通費額も事前に把握しておきます。








⑦健康診断書
(3か月以内)
健康診断書は、本人の最近の健康状態を把握するために必要です。本人の健康状態を詳細に把握する場合は、「健康状態自己申告書」(任意)を作成し、持病や入院歴・通院歴などを本人同意のもと、自己申告してもらいます。
⑧身元保証書・誓約書 身元保証書は、社員が会社に損害を与えた場合に、損害を社員本人と連帯して保証人が賠償するという契約の意味で作成します。
誓約書は社員に会社のルールを遵守してもらう意味で作成します。
⑨秘密保持誓約書 企業秘密の外部漏えい防止や管理のために必要です。
⑩社有車・マイカー利用
許可申請書
社有車・マイカー利用許可申請書は、通勤・業務に車を利用する場合には必要です。
「社員が社有車・マイカー利用中に重大な交通事故を起こして賠償が発生したうえ、任意保険の期限が切れていた」ような場合、会社が損害を被ることになります。
・社内での事務手続き

社員から提出された書類等をもとに、次の帳簿書類を作成します。

作成する帳簿書類□労働者名簿
□賃金台帳
□出勤簿
□源泉徴収簿
・社会保険・雇用保険の事務手続き

社員が入社すると、健康保険・厚生年金保険や雇用保険の手続きが必要です。提出された書類等をもとに届出書類を作成し、必要書類とともに提出します。提出先、提出期限に注意しましょう。

(1)健康保険・厚生年金保険の手続き
下記の書類を会社所在地を管轄する年金事務所等に提出します。

提出書類□健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
【被扶養者がいる場合】(注1)
□健康保険被扶養者(異動)届
□国民年金第3号被保険者資格取得届(被扶養者が配偶者の場合)
必要な書類等□年金手帳
□在学証明書、住民税の非課税証明書など(被扶養者が配偶者以外の場合)
提出期限入社日(資格取得日)から5日以内(第3号被保険者資格取得届は14日以内)
提出先会社所在地を管轄する年金事務所(または加入している健康保険組合、厚生年金基金)

(注1)社員の配偶者等が被扶養者になれる収入要件
次の①、②のいずれにも該当する場合(同居の場合)
①配偶者等の年間年収が130万円未満(60歳以上75歳未満の人や一定の障害者は180万円未満)
②被保険者(社員本人)の年間年収の2分の1未満


(2)雇用保険の手続き
下記の書類を会社所在地を管轄するハローワークに提出します。

提出書類雇用保険被保険者資格取得届
必要な書類等前職の雇用保険被保険者証
提出期限入社日(資格取得日)の属する月の翌月10日まで
提出先会社所在地を管轄するハローワーク

※65歳以上の人で、新たに採用される人等は対象になりません。


●パート・アルバイトの人は、社会保険への加入義務はあるのか?
給与の支給金額ベースではなく、その人が働いている実態(労働日数・労働時間)で判断します。
最近では、勤務実態が正社員とほとんど変わらない人は、社会保険の加入対象になると思われます。

健康保険・厚生年金の加入の目安雇用保険の加入の目安
1日または1週間の勤務時間と1ヶ月の勤務日数が、それぞれ正社員のおおむね3/4以上の人は加入しなければなりません。次の①、②のいずれにも該当する場合
①31日以上の雇用見込みがある
②1週間あたりの所定労働時間が20時間以上ある

60歳からの年金

60歳からの年金と税金

・年金がカットされる人は誰?

働きながら年金をもらっているすべての方の年金がカットされるわけではありません。
厚生年金に加入している人)だけが対象になります。
よって会社に勤めている人(役員も含む)は基本的には年金カットの対象になってしまいます。

逆に言えば厚生年金に加入しなければいくら収入があっても年金は全額もらえるのです。

・在職老齢年金とは?

60歳以後に厚生年金に加入して働く方で、給与と年金額に応じて計算することにより
カットされた年金のことで、60歳前半(60~64歳)の在職老齢年金と60歳後半
(65~69歳)の在職老齢年金の2種あります。

ここでは支給要件の厳しい60歳前半の在職老齢年金について説明します。

在職老齢年金

図表の「報酬比例部分とは」、収入によって金額が決まるいわゆる年金の2階建て部分です。
「定額部分」とは、加入期間によって金額が決まる、いわゆる年金の1階建て部分(国民年金部分)です。

上記の表の通り、世代が若くなるにつれ、65歳前の年金から段階的になくなっていきます。
この65歳前の年金を「特別支給の老齢厚生年金」といいます。

60歳前半の在職老齢年金はこの「特別支給の老齢厚生年金」部分がカットの対象となるわけです。

・年金はいくらカットされる?

支給停止額は次の通りです。

支給停止額
(月額)


(年金月額※1+総報酬月額相当額※2-28万円)÷2
※1年金月額とは、その人が本来ならば支給される年金額を12で割った額です。
※2総報酬月額相当額とは簡単に言うと給与の月額(交通費込み)と直近1年間に受給した賞与の金額を12で割った 金額との合計額になります。
年金はいくらカットされる?
・実際に計算してみよう

(例) 
・給与の月額が31万円(交通費込み)
・直近1年の賞与の額が60万円
・年金月額が15万円とすると・・・

まず総報酬月額相当額を算出する必要があります。
賞与の額が60万円なのでこれを月換算します→60万÷12=5万円
次に給与の月額が31万円でこれを標準報酬月額という計算上の給与に換算します→32万円になります。
この2つを足した金額 5万円+32万円=37万円が総報酬月額相当額となり、
年金月額は15万円ですので上記算式に当てはめて支給停止額が算出できます。

支給停止額=(15万円+37万円-28万円)÷2=12万円
・ 税務の面で考えてみよう

では今度は税務つまり役員報酬と在職老齢年金の関係について考えてみましょう。
現在60歳代前半の社長様が数多くいらっしゃると思います。

昨今の景気悪化により会社で決めた役員報酬金額を、実質は資金不足で未払いになっていてるなんて事はありませんか?

役員報酬ももちろん給与ですから在職老齢年金の対象になり、金額にもよっては年金がカットされてしまう可能性もおおいにあるのです。 。

だったら役員報酬をすぐさげればいいのでは? と思うのですが、役員報酬は税務上相当の理由がない限り、期首から3ヶ月以内でないと変更できないという制約があるのです。
よって、在職老齢年金を考慮した役員報酬額を事前に計算する事が大切なのです。

・ 試算いたします

当事務所では年金の試算から役員報酬の決定、それに伴う所得税等の税金額等、税務も含めた トータルな面からお手伝いできます。
迷われたら時は是非、当事務所にご相談下さい。